デザインびいき

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デザインびいき

デザイン思想・思考を軸に、ビジネス・プランニング・エンジニアリングへのダイブ

『標準の哲学〜スタンダードテクノロジーの三〇〇年』を読んでの雑感。

デザイン思想・思考を軸にビジネス・プランニング・エンジニアリングへのダイブを試みるブログ、デザインびいき。今日はエンジニアリングの歴史を体系的に把握できる本を読んだ話。

 

僕はデザイナーなので、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、プロダクトデザイナー、ファッションデザイナーなど…、それぞれの違いはある程度わかるんだけど、それはもちろん、自分自身がデザイナーになったからわかることで、それまではさっぱりわかりませんでしたw。

同じようなことがエンジニアにも言えて「世の中色んな所にエンジニアいるけど、あれらはみんな、同じエンジニアのことなのだろうか…やってる事があまりにも違うようにみえる…」と常々思っていて(僕はWebアプリケーションエンジニア、Webインフラエンジニアとしか働いた経験がない)、一度体系的にエンジニアリングの事勉強しなきゃなあ…と思っていた矢先、この本に出会いました。

 

 

橋本毅彦著『標準の哲学』、とても面白かったので、斜め読みして印象的だった所についての雑感を以下に。

 

電球、電池、ホッチキスの芯、これらは買ったらすぐ使える…適当な長さに調節する必要はない…これが互換性があるってこと…。なんで互換性が必要なのかというと替えがきくから。道具の部品も互換性あれば、壊れた部品交換するだけで修理完了。互換性があるものを作るには、設計図を作る必要がある。互換性部品を加工する工作機械も作るし、当然、工作機械も互換性を持ち標準化されていく。そうすると職人の勘に頼ってた作業精度、時間も標準化される…

なるほど。現代の色んな当たり前ってそういう思想・思考で今に至っているのだなあと。

 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/3e/Harpers_Ferry_gun_smith_shop_-_Blanchard_lathe_-_01.jpg

これはトマス・ブランチャードの銃を作る機械ですが、機械を作ることは、作り方を作ることでもあって…

ブランチャードの工作機械による銃身製造の14工程

銃床の材料となる材木を適当な長さに切る→◯◯(長いので省略)を整える→◯◯丸みをつける→◯◯溝を掘る→◯◯削る→◯◯削る→◯◯開ける→◯◯切る→◯◯削る→◯◯削る→◯◯整える→◯◯削る→◯◯削る→横と柄のピンの穴を開ける

この工程を見た時に「あぁ…Webアプリケーションエンジニアの、このデータを取得して、こうすると…こんなデータが抽出できる…」みたいな話と通ずるものがあるなあと。

Thomas Blanchard - Wikipedia

 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/2c/Slide_rule_for_turning_work.png

これは『テイラー計算尺』と呼ばれるものですが、これを作ったフレデリック・テイラーも面白くて、以下は、一定の強度や互換性のあるネジを作る条件を定義していて…

工作作業の分析には12のパラメーターがある。

切削される金属の材質、直径、深さ、クズの厚さ、金属と工具の硬度、刃先の形状、工具の材質、冷却水、時間、圧力、回転速度とフィード速度、押し引きの強さ

これなんか要件定義かなあとw。まあ当たり前といったらそうかもしれないけど、リアルだし、問題が起きる→原因を特定し対処…と繰り返した結果、これが出来上がっているんだろうな…と思うと、もう、僕が知ってるWebアプリエンジニアと動きが一緒だなあとw。

テイラーは、ウィリアム・セラーズという人がネジの形やサイズや強度を標準化してく過程で活躍していくんだけど、その後も製造は計画性を持って進められる…というような働き方の管理法(規範とかマネジメントなのかな?)も構築していく人で、現代の働き方の礎を作った人なのかなあ?と。

フレデリック・テイラー - Wikipedia

 

http://designobserver.com/media/images/39272-Frank_Gilbreth.jpg

フランク・ギルブレスとリリアン夫妻の動作研究も面白くて、夫婦は作業時間研究から、人の動作の研究にフォーカスしていく中で、レンガ積みの18工程を4と1/2に短縮できるという本を書きます(どういうw)。

レンガ積みの18のステップ

モルタルに近づく→手を伸ばす→こねる→レンガへ近づく→手を伸ばす→つかむ→モルタル運ぶ→レンガ運ぶ→モルタルつける→ぬる→余分トル→余分元に戻す→レンガ置く→余分モルタルトル→余分戻す→レンガ叩いて沈める→モルタルトル→余分戻す

という18工程は、4と1/2に短縮できる。そしてこの18ステップには3種類のやり方(初心者、ゆっくり、急ぎ)が存在していて、これまで3種類の技術が職人から職人に引き継がれてきたけど、それやめよう、4と1/2の1種類で良いよ…

これなんか時短というか、簡略化というか、やがては自動化になっていくのだろうけど、僕の知ってるWebアプリエンジニアと同じ思想・思考法だなと。

フランク・バンカー・ギルブレス・シニア - Wikipedia
 

彼ら彼女らは、文明が発展する過程で、現代の色々な仕組みの素になるような物や事をたくさん作ったことから、歴史の中ではエンジニアというよりも発明家とされているようです。後世から見たら、ジョブズやダイソンだってデザインエンジニアリング思想・思考で人の生き方に影響を与えた発明家と呼ばれることがあるのかもしれないなあ、などと。

 

デザイン思考も、エンジニア思考も、デザインエンジニア思考も行き着く先の目的や達成したい世界感は同じはずなので、自分自身がどの領域から物事を組み立てるのが得意なのか?ということと、当然他の領域にも造詣が深いほど良い、ということなのかなあと。

 

あんまり関係ないですけど、

イギリスが職人やノウハウを外部に持ち出すことを禁止しているうちにアメリカはフランスから学び独自のエンジニアリングを形成していった…

フランスは職人たちが新しい働き方などに抗議してラダイト運動した…

酒を飲みながら働いていた職人達に管理を持ち込み、工場長が職人たちに…

とかって、今のOSS思考だとか、UBERのフランスでのタクシー運転手デモとか、AIが人の仕事奪う云々…とかと全く一緒の話で、歴史は繰り返すのねw。

人の思想・思考や営み、物事の進み方・受け入れられ方というのは、良くも悪くもあまり変わらないのだろうから、大局の流れと行き着く先の方向性は把握しておきたいなあと改めて思いました。

 

ちなみに『標準の哲学』は絶版のようだったので図書館で借りましたが、『「ものづくり」の科学史 世界を変えた《標準革命》』となって売られてるようです。(Kindle有るじゃんかーw)

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51YniZHDt8L._SX350_BO1,204,203,200_.jpg